黄金金時ヤマメのあらまし

 令和元年10月に発生した台風19号はその驚異的な威力で各地に甚大な被害をもたらしました。箱根町では総降水量が1000ミリを記録。東日本では17 地点で500 ミリを超え河川の氾濫や家屋の倒壊が多発しました。

私たち株式会社足柄養魚場もその被災者のひとりで、養魚場の断水による魚の全滅等の被害を受けました。

また、さらに本州に上陸した台風19号はそのまま日本列島を縫う形で北上し、13日に日本の東で温帯低気圧となりました。

その台風の軌道に位置する神奈川県相模原市「うらたんざわ渓流釣り場」。ここに黄金金時ヤマメのルーツがあります。

 「うらたんざわ渓流釣り場」は相模川の支流、道志川に清流を注ぐ「神ノ川」の最上流を使用した管理釣り場と鱒の養殖場です。丹沢の大自然に囲まれながらフライ、テンカラ、ルアーなどの渓流釣りが楽しめる全長約1.5kmの人気施設です。

この穏やかな場所に突如現れた台風19号は想像を絶する大量の雨で、清流神ノ川を氾濫させ養殖池と釣り場を襲いました。

ここで養殖されていた魚のほとんどが流出してしまい、川の氾濫によって釣り場や施設などが流され壊滅的な状態に陥りました。

台風が過ぎ去った後、現場の被害状況を確認しに訪れた水産試験場の職員「H氏」は川の瓦礫の中から僅かに生き残った「アルビノヤマメ」を発見。これは先代の「I氏」がとても大切に育てていた魚で「うらたんざわ渓流釣り場」を象徴する優美で珍しい種類の魚でした。

アルビノのヤマメは全国でもごく僅かしか出現しておらず、これをなんとかもう一度この地で養殖ができないかと「H氏」から提案があったものの、経営的判断で養殖を止め釣り場の営業のみにした「うらたんざわ渓流釣り場」側はこれを断念せざるを得ませんでした。

大変貴重な魚の為、養殖をなんとしても再開させたい試験場はこれを増殖できる養魚場を探していました。

そこで、毎年「金時ヤマメ」の発眼卵を試験場に寄付していた当場に声がかかり、早速「アルビノヤマメ」のサンプルを試験場から取り寄せましたが、被災した池から救出された魚は数も僅かなうえに、慣れない試験場の水環境で育った魚体は衰弱していて、エサもまともに食べることができませんでした。とても量産できる状態ではないことがわかったのです。

この弱り切った魚を増殖するにあたって、まず流れが非常に緩い水槽で通常の半分のサイズのペレットを鼻面まで持っていき、ひたすらエサを食べられるようにしながら徐々に水流、水深のある水槽へと移す作業を行いました。この工程を繰り返し行った結果、卵を持った親魚に成長しました。それでも、親魚の数は圧倒的に少なかった為、数を補うために「金時ヤマメ」との掛け合わせに踏み切りました。(当場の魚は台風で全滅しましたが、試験場に寄付していた「金時ヤマメ」を取り寄せることができました。)これにより誕生した「黄金金時ヤマメ」は商業ベースに乗る程の量産に成功しました。

(写真:アルビノヤマメ親魚)

(写真:絞った卵)

(写真:量産された黄金金時ヤマメ)

 

 共に令和元年台風の被害を受けながらも復興を成し遂げる為、がんばって生き延びてきたこの「アルビノヤマメ」と「金時ヤマメ」にはひときわ感慨深いものがあります。

最後に、この「黄金金時ヤマメ」の命名を快諾して頂いた「うらたんざわ渓流釣り場」様と、「アルビノヤマメ」・「金時ヤマメ」の系統維持に尽力して頂いた神奈川県大島水産試験場の「H氏」にこの場をお借りして深くお礼申し上げます。本当にありがとうございました。

足柄養魚場

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